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大阪家庭裁判所 昭和31年(家ロ)12号 審判 1957年4月22日

申立人 井橋トシ子(仮名)

相手方 井橋安治(仮名)

主文

相手方は申立人に対し、別紙調停条項第一項の扶養料昭和二七年八月より昭和三二年三月迄合計金一九万六千円の内、金二万円を同年五月末日迄に申立人方へ送金又は持参支払うことを命ずる。

理由

本件申立理由の要旨は相手方は昭和二七年八月七日宮崎家庭裁判所日南支部で成立した同庁昭和二七年(家イ)第三五号扶養料調停事件に於て、申立人及び双方間の長男誠の扶養料として同年八月以降双方が同居に至るまで一ヶ月金三千五百円宛を毎月末日限り相手方より申立人方へ送金支払うことの債務を負担したのに拘わらず、相手方はこれを履行しないので、相手方に対する履行命令を求めるというのである。

当庁調査官五藤忠夫の調査の結果によると上記事実及び相手方は資産なく現在失職中でその情婦佐野トシエの和裁による収入と相手方の父井橋忠三、兄井橋弘人よりの一ヶ月金三千円位の送金によつて生活しているが、相手方は働き盛りの年令で同人自ら生活の資を得ることは可能であり、父兄は相当の資産、収入を有して相手方を援助することにやぶさかでないこと、従つて相手方が支払の意志を有して努力するなら上記金員の内、金二万円の限度で昭和三二年五月末日迄に支払うことは可能であることを夫々認めることができる。

もとより相手方がこの金を支払うことは容易でなかろうが、申立人も長男誠を抱えて生活に困つているのであり、而も本件につき原裁判所に本命令の申立があつて以来すでに八ヶ月を経過し、今後も毎月金三、五〇〇円宛の延滞額が増加してゆく現状にある。それにも拘わらず相手方が働きもしないで単に収入のないことを理由に支払を滞ることは許されないところであつて、何としても義務を履行する心構えを持たねばならない。此の点を考慮して一先づ延滞総額の二割にも足りない金額に付て本命令を出すこととしたのであるから、相手方において十分の誠意を示さないときは後記のとおり過料の審判を受けるばかりでなく、更に第二、第三の履行命令を受けることも考えて、履行に努力することを切望する。

よつて、諸般の事情を考慮して、主文のとおり審判する。

(家事審判官 沢井種雄)

相手方は正当の事由がなくこの命令に従わないときは金五千円以下の過料に処せられる。

この命令は調停で定められた義務に何らの影響を及ぼすものではない。

(別紙)

調停条項

一、相手方は申立人に対し申立人及長男誠の扶養料として毎月三千五百円を昭和二七年八月末より将来申立人と同居するに至るまで各々月末までに申立人の住所に送金して支払うこと。

二、相手方は金一千五百円を昭和二七年八月一五日迄に申立人にその住所に於て支払うこと。

三、相手方は第一項の支払いを連続二回怠つたときは分割払いの利益を失い一時に請求受けるも異議ないこと。

四、申立人はその余の請求を放棄する。

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